ADHDで障害年金は受給できる?【社労士が解説】
ADHD(注意欠如多動性症)によって仕事や日常生活に生きづらさを感じている場合、経済的な基盤を確保し、治療や自分らしい働き方を支えるための「障害年金」という制度があります。
ここでは、ADHDの方が障害年金を受給するための基礎知識や、審査の重要ポイントについて解説します。
1. ADHDは障害年金の対象になる?
ADHDは「不注意(集中できない)」「多動性(じっとできない)」「衝動性(思いつきで動く)」といった特性を持つ発達障害の一つです。大人になってからは多動性が目立たなくなる一方で、不注意や衝動性が残り、仕事上のミスや金銭管理、人間関係のトラブルなどに繋がることがあります。
ADHDは障害年金の対象です。
ADHDは「精神の障害」として扱われ、障害年金の対象となります。障害年金は、ケガや身体の病気だけでなく、発達障害によって日常生活や仕事に制限が生じている場合にも受け取ることができる公的な年金制度です。
2. 認定の基準と等級
審査において最も重視されるのは、病名そのものではなく「発達障害によって日常生活や社会生活にどれだけ支障が出ているか」という点です。
等級の目安(精神の障害)
- 1級: 常に介助が必要で、自力での生活が困難な状態。
- 2級: 日常生活に著しい制限があり、労働が困難な状態(一般就労が維持できない等)。
- 3級(厚生年金のみ): 労働に著しい制限がある状態。
ADHDの場合、自閉症スペクトラム障害(ASD)など他の発達障害と同じ認定基準で審査されますが、特性に応じた困難さ(例:計画的な行動ができない、注意が持続しない等)が具体的に評価されます。
3. 受給のための3つの要件
申請を行う前に、以下の3つの条件をすべて満たしているか確認が必要です。
- 初診日要件
障害の原因となった症状で、初めて医師の診察を受けた日(初診日)を特定・証明できること。 - 保険料納付要件
初診日の前日時点で、一定期間の年金保険料を納めている(または免除されている)こと。 - 障害認定日の要件
初診日から1年6ヶ月経過した日(障害認定日)において、障害等級に該当する状態であること。
4. いくらもらえる?支給額の目安
障害年金の額は、等級と加入している年金制度(国民年金か厚生年金か)によって異なります。令和7年度の目安は以下の通りです。
- 障害基礎年金
- 1級: 1,039,625 円 +子の加算
- 2級: 831,700 円+ 子の加算
※子の加算:18歳年度末までの子(障害等級1・2級の場合は20歳未満の子)がいる場合に加算されます。第1子・第2子は各239,300円、第3子以降は各79,800円です。
- 障害厚生年金
- 1級: 障害基礎年金+(報酬比例の年金額) × 1.25 + 配偶者の加給年金額
- 2級: 障害基礎年金+(報酬比例の年金額) + 配偶者の加給年金額
- 3級: (報酬比例の年金額) ※最低保障額 623,800円
※報酬比例の年金額は、厚生年金の加入期間や過去の報酬額(給与)によって異なります。
※配偶者の加給年金額:生計を維持されている65歳未満の配偶者がいる場合に加算されます(年額239,300円)。
5. 働きながらでも受給できる?
「働いていると障害年金はもらえない」と誤解されがちですが、働きながら受給している方は多くいらっしゃいます。
ただし、審査では就労状況が重要な判断材料となります。単に働いている事実だけでなく、「どのような配慮を受けているか」がポイントです。
- 障害者雇用枠で働いている
- 業務内容を単純作業に限定してもらっている
- 時短勤務や、業務中の頻繁な指示・サポートを受けている
このように、職場からの特別な配慮がなければ就労継続が難しい状況であれば、その実態を具体的に申告することで、障害の程度が認められやすくなります。
6. 申請を成功させるコツ
ADHDなどの精神障害は数値で重さを測ることが難しいため、提出する書類(診断書・申立書)の完成度が結果を大きく左右します。
① 医師への伝え方を工夫する
医師は限られた診察時間ですべての生活状況を把握できているわけではありません。診断書作成を依頼する際は、メモを作成して渡すのが有効です。
- NG例:「片付けが苦手です」
- OK例:「ゴミが捨てられず部屋が足の踏み場もない。支払い用紙を紛失して電気が止まったことが何度かある」
このように具体的なエピソードで生活の困難さを伝えましょう。
② 病歴・就労状況等申立書を丁寧に作成する
ご自身で作成するこの書類は、診断書を補完する重要なものです。発症から現在までの経過、職場でのトラブル、家族から受けている支援の内容などを、診断書と矛盾がないように具体的に記載してください。
7. 申請後の流れと注意点
書類提出後、結果が出るまではおおむね3〜4ヶ月程度かかります。
また、ADHDは症状が変化する可能性があるため、多くの場合は有期認定(1〜5年ごとの更新)となります。一度認定されても、定期的に診断書の提出が必要になる点を理解しておきましょう。
1人で悩まず、ぜひご相談ください!
障害年金の申請は複雑で、専門的な知識が求められます。社会保険労務士(社労士)は、障害年金の専門家として申請をサポートします。
以下のような状況であれば、当事務所の無料相談をご検討ください。
・手続きが複雑で、何から手をつけていいか分からない
・初診日の証明が難しい
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・医師に自分の状態をうまく説明できる自信がない
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オンラインや実際にお会いして障害年金に関するご相談をお受けいたします。
また、ご自身での申請が難しい場合には、障害年金の申請代行サポートもございますので、お気軽にご相談ください。


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