うつ病の障害年金診断書|医師に伝えるべきポイントを社労士が解説

この記事の結論
  • うつ病の障害年金では、精神の障害用の診断書(様式第120号の4)が審査の中心資料になります。
  • 特に重要なのが裏面の「日常生活能力の判定」7項目と「日常生活能力の程度」です。ここが等級判定の目安に直結します。
  • 評価は「単身で生活するとしたら」を想定して行われます。家族の援助を受けて生活できている場合も、援助がない前提で伝える必要があります。
  • 診断書は医師が作成するものです。ご本人ができるのは日常生活の実態を正確に伝えることであり、記載内容を指示することではありません。

うつ病の障害年金では、どの診断書を使う?

うつ病の障害年金請求には、「精神の障害用」の診断書(様式第120号の4)を使用します。日本年金機構のウェブサイトから様式をダウンロードでき、主治医に作成を依頼します。

診断書は、請求のパターンによって必要な枚数が変わります。

請求方法 必要な診断書
認定日請求 障害認定日から3か月以内の現症の診断書
事後重症請求 請求日前3か月以内の現症の診断書
遡及請求 上記2枚(障害認定日時点+現在)

診断書には「現症日」が記載されます。この日時点の状態で審査されるため、体調に波があるうつ病の場合、いつの時点で作成してもらうかは実務上の重要な論点になります。

審査で最も見られる項目はどこ?

診断書の裏面にある「日常生活能力の判定」と「日常生活能力の程度」です。

厚生労働省「精神の障害に係る等級判定ガイドライン」は、この2つの組み合わせを障害等級の目安として用いると定めています。

日常生活能力の判定(7項目)

1. 適切な食事

2. 身辺の清潔保持

3. 金銭管理と買い物

4. 通院と服薬

5. 他人との意思伝達および対人関係

6. 身辺の安全保持および危機対応

7. 社会性

各項目が4段階で評価されます。程度の軽いほうから1〜4の数値に置き換え、7項目の平均値(判定平均)が算出されます。

日常生活能力の程度(5段階)

全体としての生活能力を(1)〜(5)で評価する項目です。

この2つが噛み合っていないと、ガイドラインでは「整合性が低く、参考となる目安がない場合」として、医師への内容確認が行われることがあるとされています。

(等級ごとの目安表については、関連記事「うつ病で障害年金3級は認定される?等級の判断基準」で詳しく解説しています。)

「単身で生活するとしたら」という評価の視点

ここが、ご本人・ご家族が最も誤解しやすいポイントです。

ガイドラインは、生活環境について次のように定めています。

入所施設やグループホーム、日常生活上の援助を行える家族との同居など、支援が常態化した環境下では日常生活が安定している場合でも、単身で生活するとしたときに必要となる支援の状況を考慮する

つまり、「実家で家族が食事を作ってくれるので毎日食べられている」という状態は、「適切な食事ができている」ではありません。「一人だったら食事を用意できない」という実態を伝える必要があります。

同様に、次のようなケースも同じ考え方です。

  • 家族が薬を管理しているので飲み忘れがない → 一人だと飲み忘れる
  • 家族が銀行や役所の手続きを代行している → 一人だと手続きができない
  • 家族が声をかけるので入浴できている → 一人だと何日も入浴しない

援助を受けて「できている」ことと、援助なしで「できる」ことは別です。ここが診断書に反映されていないと、実態より軽く評価される可能性があります。

診察時の状態だけで判断されないために

うつ病は症状に波がある病気です。診察室では比較的落ち着いて話せていても、自宅では寝たきりに近い状態という方も少なくありません。

ガイドラインでは、気分(感情)障害について次の考慮が示されています。

現在の症状だけでなく、症状の経過(病相期間、頻度、発病時からの状況、最近1年程度の症状の変動状況など)及びそれによる日常生活活動等の状態や予後の見通しを考慮する

診断書の評価も、診察時の一時的な状態ではなく、現症日以前おおむね1年程度の状態の変動を踏まえて行われるべきものです。症状が良くなったり悪くなったりした場合は、その両方を考慮して判断されます。

限られた診察時間で1年分の実態が伝わることは、まずありません。 ここを補うのが次の項目です。

医師に伝えるべき5つのポイント

診断書を作成するのは医師です。ご本人が診断書の内容を指定することはできません。できるのは、判断材料となる事実を正確に、具体的に伝えることです。

① 頻度と数値で伝える

「つらい」「しんどい」ではなく、次のように伝えます。

  • 入浴は週に何回か
  • 1日のうち横になっている時間は何時間か
  • 食事は1日何回か、自分で用意できるか
  • 買い物に行けるのは月に何回か
  • 予定していた外出をキャンセルした回数

② 一人だったらどうなるかを伝える

前述の「単身生活を想定した評価」に対応する情報です。

③ できなかった日のことを伝える

体調の良い日の話だけをしてしまうと、実態より軽い記載になります。直近1年で最も悪かった時期と、その頻度を伝えてください。

④ 就労している場合は、その中身を伝える

働いているという事実だけでは、実態は伝わりません。

  • 週何日・1日何時間か
  • 障害者雇用か一般雇用か
  • 上司や同僚からどのような配慮を受けているか
  • 欠勤・早退・遅刻がどのくらいあるか
  • 仕事から帰った後、家事ができているか

ガイドラインは「就労の影響により、就労以外の場面での日常生活能力が著しく低下していることが客観的に確認できる場合は、就労の場面及び就労以外の場面の両方の状況を考慮する」と定めています。

⑤ 事前にメモにまとめて渡す

診察時間内に口頭で全て伝えるのは現実的ではありません。A4で1〜2枚程度のメモにまとめ、診断書の依頼時に渡す方法が有効です。

やってはいけないこと

  • 事実と異なることを伝える:診断書と病歴・就労状況等申立書、カルテの内容に矛盾があると、審査上の信頼性を損ないます。
  • 医師に等級や記載内容を指示する:診断書は医師の医学的判断に基づく文書です。「2級と書いてください」といった依頼は適切ではありません。
  • 体調の良い日だけを話す:診察時に無理をして「大丈夫です」と答える方は非常に多く、それが診断書に反映されてしまいます。

診断書を受け取ったら確認するチェックリスト

チェックリスト
  • ☐傷病名・発病年月日・初診年月日が事実と一致しているか
  • ☐現症日が請求方法に合った時期になっているか
  • ☐「日常生活能力の判定」7項目が、実際の生活状況を反映しているか
  • ☐「日常生活能力の程度」と判定7項目の内容に大きな食い違いがないか
  • ☐就労状況欄に、受けている配慮や勤務実態が記載されているか
  • ☐現在の病状・治療内容・服薬内容が記載されているか
  • ☐空欄になっている項目がないか
  • ☐病歴・就労状況等申立書の内容と矛盾していないか

内容に事実と異なる点があれば、修正を依頼すること自体は問題ありません。 ただし「事実と違う」ことを根拠に伝えるのであって、「等級が下がりそうだから」を理由にするものではありません。

よくあるご質問

QQ. 診断書の作成費用はどのくらいかかりますか?

A医療機関によって異なり、自由診療のため一律の定めはありません。事前に窓口でご確認ください。

QQ. 主治医が障害年金に詳しくないようです。どうすればよいですか?

A厚生労働省は診断書の記載要領を作成し、医療機関への周知を図っています。日常生活の実態を具体的に伝えたうえで、記載要領を参考にしていただくよう依頼する方法があります。

QQ. 診断書を書いてもらえないと言われました。

A理由をお尋ねください。「障害年金に該当しないと思う」という理由であれば、等級を判断するのは日本年金機構であり医師ではないことをお伝えする方法があります。それでも難しい場合は、転院やセカンドオピニオンを検討することになります。

QQ. 転院したばかりですが、診断書は書いてもらえますか?

A現在の主治医が現症日時点の状態を診ていれば作成は可能です。ただし過去の経過については、前医の記録や病歴・就労状況等申立書で補うことになります。

QQ. 診断書の内容を自分で書き直してもよいですか?

Aできません。診断書は医師が作成する文書です。事実と異なる点がある場合は、医師に修正を依頼してください。

出典

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最終更新日:2026年8月7日

執筆者情報
橘憲一
橘憲一社会保険労務士
『障害年金のことで困っている方々の力になりたい』という想いから、障害年金特化型の当事務所を立ち上げました。
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