うつ病の障害年金|初診日の特定が難しい場合の対処法を社労士が解説

この記事の結論
  • 初診日とは、障害の原因となった傷病について初めて医師の診療を受けた日です。精神科である必要はなく、内科や心療内科が初診日になることもあります。
  • 初診日は、①受給できる年金の種類、②保険料納付要件の判定時点、③障害認定日を決める、3つの役割を持ちます。
  • 医療機関の証明が得られない場合は、「受診状況等証明書が添付できない申立書」+参考資料で立証します。
  • 第三者証明は、20歳前に初診日がある場合は2通、20歳以降の場合は第三者証明に加えて参考となる他の資料も必要です。

初診日とは?いつの日を指す?

障害の原因となった傷病について、初めて医師または歯科医師の診療を受けた日を指します。

うつ病の場合、多くの方が「精神科に初めて行った日」と考えますが、それが初診日とは限りません。

初診日になり得るのは、たとえば次のようなケースです。

  • 不眠を訴えて内科を受診し、睡眠導入剤を処方された日
  • 体調不良で受診した心療内科で相談した日
  • 健康診断で異常を指摘され、医師の指示で受診した日
  • 職場の産業医の診察を受けた日(医師の診療に該当する場合)

うつ病は身体症状から始まることが多く、精神科にたどり着く前に他科を受診しているケースが非常に多い傷病です。ここが初診日特定を難しくしています。

なお、健康診断を受けた日は原則として初診日になりませんが、その結果によって治療を受けた場合など、取扱いが分かれることがあります。

なぜ初診日がそれほど重要なのか

初診日は、障害年金の請求において3つの役割を持ちます。

① 受給できる年金の種類が決まる

初診日時点の加入制度 受給できる年金 等級
厚生年金(会社員・公務員など) 障害厚生年金 1級・2級・3級
国民年金(自営業・専業主婦(夫)・無職・学生など) 障害基礎年金 1級・2級
20歳前(年金未加入) 20歳前傷病による障害基礎年金 1級・2級

初診日が会社員時代か退職後かで、受給できる年金の種類も金額も変わります。

② 保険料納付要件の判定時点が決まる

納付状況は、初診日の前日時点で判定されます。初診日が1日違うだけで要件を満たすかどうかが変わることがあります。

③ 障害認定日が決まる

原則として初診日から1年6か月を経過した日が障害認定日となり、この時点の状態で認定日請求の可否が判断されます。

初診日が確認できない場合、障害年金の請求は認められません。 これが、うつ病の障害年金で最初にして最大の関門です。

医療機関の証明が取れない主なケース

初診日の証明は、初診の医療機関に「受診状況等証明書」を作成してもらうのが原則です。しかし、次のような理由で取得できないことがあります。

  • カルテが廃棄されている(医師法上の保存義務は5年間)
  • 医療機関が廃院している
  • 初診から長期間が経過している
  • 転院を繰り返しており、最初の医療機関がわからない
  • 当時の受診が精神科ではなく、記録が残っていない

うつ病は発症から請求までの期間が長くなりやすく、このケースに該当する方は珍しくありません。

証明が取れないときの手順

STEP1:受診状況等証明書が添付できない申立書を用意する

初診の医療機関で証明が取得できない場合、「受診状況等証明書が添付できない申立書」を提出します。

そのうえで、2番目以降に受診した医療機関から順に受診状況等証明書の取得を試み、証明が取れた医療機関までさかのぼって記載します。

STEP2:参考資料を探す

日本年金機構は、初診日について客観性が認められる資料の提出を求めています。うつ病の場合、次のようなものが考えられます。

  • 診察券(初診年月日の記載があるもの)
  • 入院記録
  • 請求の5年以上前に医療機関が作成したカルテ等
  • お薬手帳・処方箋の控え
  • 領収書・診療明細書
  • 健康保険の給付記録(レセプトの記録)
  • 事業所の健康診断の記録
  • 生命保険・医療保険の給付記録

「何もない」と思っていても、保険会社の給付記録や健康保険組合の記録が残っていることがあります。手元にないから諦める、という判断は早すぎます。

STEP3:第三者証明を検討する

医療機関の証明も参考資料も乏しい場合、第三者証明という方法があります。

第三者証明の要件

第三者証明とは、医療機関で診療を受けていたことについて第三者が申し立てて証明するものです。初診日が20歳前か20歳以降かで、必要な条件が異なります。

  20歳前に初診日がある場合 20歳以降に初診日がある場合
必要な通数 2通 1通
参考資料 原則不要 別途、参考となる他の資料が必要
三親等内の親族 証明できない 証明できない

20歳以降に初診日がある場合について、厚生労働省の通知は次のように定めています。

初診日がどの年金制度に加入していた時期かによって給付内容が大きく異なることも踏まえ、適切に初診日を特定する必要があることから、第三者証明とともに、初診日について参考となる他の資料の提出を求め、両資料の整合性等を確認の上、請求者が申し立てた初診日を初診日として認めることができる

なお、初診日頃に受診した医療機関の医療従事者による第三者証明については、1通でも認められる取扱いが定められています。

第三者証明として認められる申立ての内容は、次のいずれかに該当するものとされています。

  • ア:第三者が、初診日頃の受診状況を直接見て認識していた場合に、その受診状況を申し立てるもの
  • イ:第三者が、請求者や家族等から初診日頃に受診状況を聞いていた場合に、その内容を申し立てるもの
  • ウ:第三者が、請求者や家族等から請求時から概ね5年以上前に受診状況を聞いていた場合に、その内容を申し立てるもの

証明できるのは、たとえば当時の職場の上司・同僚、隣人、民生委員、施設長などです。三親等内の親族は第三者証明を行えません。

うつ病で特に注意したい2つの論点

① 「相当因果関係」で初診日が変わることがある

前の傷病がなければ後の傷病が起こらなかったと認められる場合、両者は同一傷病として扱われ、前の傷病の初診日が初診日となります。

うつ病では、たとえば以下のような場面で問題になります。

  • 別の精神疾患で通院していた後にうつ病と診断された
  • 身体疾患の治療中にうつ状態となった

一方、うつ病から双極性障害へ診断名が変わったようなケースは、診断名が変わっただけで同一の傷病経過とみなされることが一般的です。この場合、最初にかかった日が初診日になります。

判断は個別の経過によって分かれるため、自己判断せず確認することをおすすめします。

② 社会的治癒

一度症状が改善し、相当期間にわたって通院も服薬もなく、通常の社会生活を送っていた場合、その後の再発を新たな発病として扱う「社会的治癒」という考え方があります。

これが認められると初診日が後ろにずれるため、国民年金加入中だった初診日が、厚生年金加入中の再発時に切り替わる可能性があります。

ただし社会的治癒は法令上の明文規定があるものではなく、認められるかどうかは個別事案ごとの判断になります。

初診日調査のチェックリスト

チェックリスト
  • ☐うつ症状で最初にかかった医療機関を、精神科以外も含めて思い出した
  • ☐当時のお薬手帳・診察券・領収書を探した
  • ☐加入していた健康保険組合に給付記録の照会をした
  • ☐生命保険・医療保険の給付記録を確認した
  • ☐勤務先の健康診断の記録を確認した
  • ☐初診の医療機関に受診状況等証明書を依頼した
  • ☐取得できない場合、2番目以降の医療機関に依頼した
  • ☐第三者証明を依頼できる方に心当たりがある(三親等内の親族を除く)
  • ☐初診日時点で加入していた年金制度を確認した

よくあるご質問

QQ. 20年以上前のことで、初診の病院すら覚えていません。

Aまずは健康保険の給付記録から受診履歴をたどる方法があります。加入していた健康保険組合や協会けんぽに照会できる場合があります。

QQ. 最初は内科でした。精神科の初診日ではだめですか?

Aうつ症状について内科で診療を受けていた場合、そちらが初診日になる可能性があります。どちらが初診日かで受給できる年金が変わることがあるため、経過を整理して確認してください。

QQ. 第三者証明は誰に頼めばよいですか?

A当時の職場の上司・同僚、隣人、民生委員などです。三親等内の親族は行えません。 また、初診日頃の受診状況を認識していたことが前提になります。

QQ. カルテがないと言われましたが、諦めるしかありませんか?

A諦める必要はありません。「受診状況等証明書が添付できない申立書」と参考資料、第三者証明を組み合わせて立証する方法があります。

QQ. 初診日が1日違うだけで結果は変わりますか?

A変わることがあります。退職の前後、20歳の前後などで、受給できる年金の種類や納付要件の判定が変わります。

QQ. 知的障害の場合も初診日の証明は必要ですか?

A知的障害については、療育手帳の写しを添付することで受診状況等証明書の添付を省略できる取扱いがあります。うつ病とは扱いが異なります。

出典

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最終更新日:2026年8月7日

執筆者情報
橘憲一
橘憲一社会保険労務士
『障害年金のことで困っている方々の力になりたい』という想いから、障害年金特化型の当事務所を立ち上げました。
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