うつ病の障害年金が不支給になる理由と再申請のポイント

この記事の結論
  • 病歴・就労状況等申立書は、請求者本人が自分の言葉で状態を説明できる唯一の書類です。
  • 記載は発病から現在まで、期間に空白を作らず時系列で行います。受診していなかった期間も必ず書きます。
  • 期間の区切り方は、受診した医療機関ごとが原則。同じ医療機関に長く通っている場合は3〜5年ごとに区切ります。
  • 最も重要なのは診断書との整合性です。食い違いがあると、審査上の信頼性を損ないます。

病歴・就労状況等申立書とは?

障害年金を請求する本人が、発病から現在までの病状の経過、日常生活や就労における困難さを申し立てる書類です。様式は日本年金機構のウェブサイトから、PDFとExcelの両形式でダウンロードできます。

診断書が「医師による医学的な評価」であるのに対し、この申立書は「本人による生活実態の説明」です。

うつ病を含む精神の障害では、等級判定の中心が診断書の「日常生活能力の判定」「日常生活能力の程度」に置かれます。しかし、限られた診察時間で伝わる情報には限界があります。診断書だけでは伝わらない部分を補うのが、この申立書の役割です。

基本的には請求者本人が記載しますが、ご家族などに代筆を依頼しても問題ありません。 病状により作成が難しい場合、社会保険労務士に依頼することもできます。

何を書く?記載する4つの要素

各期間について、次の内容を記載します。

① 受診の状況

  • 医療機関名・所在地
  • 通院期間、通院の頻度
  • 入院の有無と期間
  • 治療内容、処方されていた薬
  • 医師から指示されていたこと
  • 転院した場合はその理由

② 日常生活の状況

  • 食事、入浴、洗濯、掃除などがどの程度できていたか
  • 買い物や金銭管理ができていたか
  • 外出できていたか
  • 家族からどのような援助を受けていたか

③ 就労の状況

  • 就労の有無、雇用形態
  • 勤務日数・勤務時間
  • 職場で受けていた配慮
  • 欠勤・早退・遅刻の頻度
  • 休職・退職の経緯

④ 受診していなかった期間の状況

  • 通院しなかった理由
  • その間の自覚症状の程度
  • 日常生活の状況

この④が抜けている申立書が非常に多いのですが、審査側から見ると空白期間は「症状が軽かったのではないか」と受け取られかねません。必ず記載してください。

期間の区切り方には決まりがある

記載は発病から現在までを、期間に空白を作らず行います。区切り方の原則は次のとおりです。

状況 区切り方
転院した 医療機関ごとに区切る
同じ医療機関に長く通っている 3〜5年ごとに区切る
受診していない期間がある その期間も独立した欄として記載する
入院など大きな出来事があった そこで区切ると経過が伝わりやすい
先天性の傷病の場合 出生時から記載し、就学・進学など教育段階で区切る

記入例(うつ病・初診が2017年5月の場合)

欄 期間 内容
1 2016年10月〜2017年5月 受診していない期間。不眠と食欲低下が続き、遅刻が増えたが受診に至らなかった経緯
2 2017年5月〜2019年3月 A心療内科を受診。通院間隔、処方、休職の有無、家事や通勤の困りごと
3 2019年4月〜2022年3月 B病院を受診。同じ医療機関が5年を超えるため3年で区切る
4 2022年4月〜現在 B病院を継続受診。現在の日常生活・就労状況

用紙が複数枚になる場合は、「No.○ ─ ○枚中」の欄に記入します。2枚目以降は同じ用紙ではなく続紙を使用します。

うつ病で書くときの5つのポイント

① 「つらい」ではなく数字で書く

抽象的な表現は審査で評価されません。次のように具体化します。

避けたい表現 望ましい表現
家事がつらい 入浴は週1回程度。洗濯物は溜めたまま2週間放置していた
ほとんど寝ている 1日のうち14時間以上横になっており、起きているのは食事とトイレのみ
外出できない 外出は月2回の通院のみ。買い物は母が代行している
仕事がきつい 月に4〜5日欠勤し、早退も月2〜3回あった

② 一人暮らしを想定した状態で書く

厚生労働省の「精神の障害に係る等級判定ガイドライン」は、次のように定めています。

入所施設やグループホーム、日常生活上の援助を行える家族との同居など、支援が常態化した環境下では日常生活が安定している場合でも、単身で生活するとしたときに必要となる支援の状況を考慮する

「母が食事を作ってくれるので食べられている」は、「食事ができている」ではありません。援助がなければどうなるかを書く必要があります。

③ 悪かった時期を書く

体調に波がある方ほど、良かった時期のことを書いてしまいがちです。しかし審査で問われるのは、その期間を通じてどのような状態だったかです。悪化していた時期の状態と、その頻度を必ず記載してください。

④ 就労している場合こそ、中身を書く

働いている事実だけを書くと、日常生活能力が高いと受け取られる可能性があります。ガイドラインは、就労継続支援A型・B型、障害者雇用制度による就労、就労移行支援について「1級または2級の可能性を検討する」と定めています。

どのような環境で、どのような配慮を受けて働けているのか。 また、仕事から帰った後に家事ができているかどうかも重要な情報です。

⑤ 診断書と矛盾させない

これが最も重要です。

診断書に「入浴は自発的にできる」と記載されているのに、申立書に「入浴は週1回で家族の促しが必要」と書けば、どちらかが不正確であることになります。

診断書を受け取ってから申立書を作成し、両方を並べて整合性を確認する手順をおすすめします。矛盾がある場合、事実がどちらなのかを確認したうえで、必要に応じて医師に相談してください。

やってはいけないこと

  • 事実と異なることを書く:症状を実際より重く書くことは、診断書やカルテとの矛盾を生み、かえって不利に働きます。
  • 感情や不満を書く:「制度がおかしい」「医師が理解してくれない」といった記載は、審査で評価される情報ではありません。
  • 期間に空白を作る:受診していない期間を飛ばすと、経過が追えなくなります。
  • 診断書を見ずに先に書き上げる:整合性の確認ができなくなります。

作成前後のチェックリスト

チェックリスト
  • ☐診断書を受け取ってから作成を始めた
  • ☐傷病名・発病日が診断書と一致している
  • ☐発病から現在まで、期間に空白がない
  • ☐医療機関ごと、または3〜5年ごとに区切っている
  • ☐受診していない期間の理由と状態を記載した
  • ☐日常生活の状況を、頻度や時間などの数字で書いた
  • ☐一人暮らしを想定した状態で記載した
  • ☐悪かった時期の状態を記載した
  • ☐就労している場合、受けている配慮と欠勤状況を記載した
  • ☐診断書と読み比べ、矛盾する記載がないか確認した
  • ☐提出前にコピーを取った

提出前のコピーは必ず取ってください。 万一不支給になった場合、何を書いたかを確認できないと、次の対応が立てられません。

よくあるご質問

QQ. 手書きとパソコン、どちらがよいですか?

Aどちらでも問題ありません。日本年金機構がExcel形式の様式も用意しているため、修正しやすさの点ではパソコンでの作成が便利です。字の綺麗さが審査に影響することはありません。

QQ. 家族が代筆してもよいですか?

A問題ありません。病状により本人の作成が難しい場合は、ご家族が代筆できます。

QQ. 昔のことを覚えていません。どうすればよいですか?

Aお薬手帳、診察券、日記、家計簿、勤務先の記録などから経過をたどる方法があります。それでも不明な部分は、無理に詳細を書かず、覚えている範囲で記載してください。事実と異なることを書くほうが問題になります。

QQ. 何枚くらい書けばよいですか?

A決まりはありません。発病から現在までの期間の長さによって変わります。分量よりも、期間に空白がないことと診断書との整合性が重要です。

QQ. 病歴が20年以上あります。全部書くのですか?

A発病から現在まで記載します。3〜5年ごとに区切ることで欄数は増えますが、記載自体は必要です。続紙を使用してください。

QQ. 社会保険労務士に依頼できますか?

A障害年金の請求手続きは社会保険労務士の業務範囲です。病歴・就労状況等申立書の作成サポートも含めて、当事務所でご相談をお受けしています。

出典

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最終更新日:2026年8月7日

執筆者情報
橘憲一
橘憲一社会保険労務士
『障害年金のことで困っている方々の力になりたい』という想いから、障害年金特化型の当事務所を立ち上げました。
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